造影剤アレルギーと造影剤腎症
造影剤アレルギーの予防法について議論する機会がありました.
「ヨード造影剤ならびにガドリニウム造影剤の急性副作用発症の危険性低減を目的としたステロイド前投薬に関する提言」の改定について
で以下の推奨がなされています.
「1.プレドニゾロン50mg(プレドニゾロン錠など各社製品あり)を造影剤投与の13時間前、7時間前、および1時間前に経口投与する。
2.メチルプレドニゾロン32mg(メドロール錠)を造影剤投与の12時間前と2時間前に経口投与する。
上記1,2に、抗ヒスタミン剤を追加してもよい(ジフェンヒドラミン50mg [レスタミンコーワ] を1時間前に筋注、皮下注または経口投与)。
3.経口投与ができない場合には、デキサメタゾン7.5mg(デカドロン®など)、もしくはベタメタゾン6.5mg(リンデロン注®など)などのリン酸エステル型ステロイドを静注してもよい。その場合は、急速静注は禁忌であり、1-2時間以上かけて点滴投与が望ましい。(3)
注意:ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンなどのコハク酸エステル型ステロイドを静注で用いると、喘息発作を誘発することがある(特にアスピリン喘息の患者)ので勧められません。経口ステロイドにはこのような危険性は少ないとされています。(4)」(「ヨード造影剤ならびにガドリニウム造影剤の急性副作用発症の危険性低減を目的としたステロイド前投薬に関する提言」の改定についてより引用)
興味深いのは以下の記述です.
「前投薬としてのステロイド投与方法としては、従来、造影剤投与直前に静注することが一般的でしたが、現在ではステロイドの抗アレルギー作用を充分に発揮させるためには、理想的には造影剤投与の6時間以上前に投与することが望ましいとされています。しかし先般行った日本医学放射線学会造影剤安全委員会による全国アンケート調査の結果では、ヨード造影剤の場合には20.7%、ガドリニウム造影剤では18.8%で造影検査の直前にステロイドを静注する手法がとられていました(2)。」(2)Jpn J Radiol 2016; 34:130-139.
(「ヨード造影剤ならびにガドリニウム造影剤の急性副作用発症の危険性低減を目的としたステロイド前投薬に関する提言」の改定についてより引用)
いまだに20%の施設で直前にステロイド静注という方法がとられていることに驚かされます.
腎機能障害例に対する投与については,「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018」があります.
造影剤腎症(CIN)は
72 時間以内に血清クレアチニン(SCr)値が前値より 0.5mg/dL 以上または 25%以上増加した場合に CIN と診断する.
とありますが,
KDIGO の AKI の診断基準では,ヨード造影剤投与後,48 時間以内に SCr 値が前値より 0.3 mg/dL 以上増加した場合,または SCr 値がそれ以前 7 日以内にわかっていたか,あるいは予想される基礎値より 1.5倍以上の増加があった場合,または尿量が 6 時間にわたって<0.5 mL/kg/h に減少した場合にCIN と診断.
とも述べられています.