What's up? Cardiology

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし

TGAって何の略?

大血管転位症(Transposition of the Great Arteries)ではなく、一過性全健忘. (Transient global amnesia : TGA)のお話です。

Hippocampus Functions

心臓カテーテル検査後に、突然自分が今どこにいて何をしているのかわからなくなった患者さんがいました。もちろん主治医は大慌てで、頭部MRIをしますが、異常所見なし。いろいろやっているうちに、患者さんは嘘のように元通り。

私も数回このような患者さんを経験したことがあります。

これが、心カテ後のTGAです。

TGAは、健忘が突然始まり,24時間以内に改善する病態です。

 心カテ後にTGAを発症したとする報告は以前からあります。(Clin Cardiol. 1986 Apr;9(4):170-1., Intern Med J. 2005 Jul;35(7):435-6. Brain and Nerve 脳と神経 56巻1号 (2004年1月))。 

 正確な機序はわかっていません。カテーテルによる微小塞栓,造影剤よる脳血管のスパズム,てんかん発作、精神的または物理的刺激により神経伝達物質放出が誘起され,一過性の細胞脱分極が起こる、などが示唆されています。

最近の中国からの報告では、心カテ8817例中4例、脳アンギオ4360例中5例にTGAを認め、これらのうち2例(発症26時間後と発症28時間後)で海馬hippocampus.に梗塞像を認めたとのことです。

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(↑Duan H. et al. Biomed Res Int. 2016;2016:2821765.より引用。発症26時間後。) 

 発症直後ではなく、24~72時間にMRAで異常が出現するというのがポイントのようです。(岐阜大学神経内科下畑教授のコラムご参照ください。)

 

「循環器内科医の知らない世界」でした。