What's up? Cardiology

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膠原病の肺高血圧は肺動脈性とは限らない

膠原病でフォロー中に心エコー図で肺高血圧(TRPG高値)が認められたため、右心カテーテル検査目的で入院となった患者さんがおられました。

さて、その患者さんの右心カテーテル検査結果は,平均肺動脈圧は25mmHg以上,肺動脈楔入圧は15mmHg未満でした。というわけで,肺血管拡張薬を開始する段取りになっていました。

ちょっとまて,肺血管抵抗は?、3 Wood Unit未満?,心拍出量が10L/min以上!

今日は膠原病の肺高血圧だからといって肺動脈性とは限らないよという話です。

 

膠原病肺高血圧を合併することがあります。「結合組織病に伴う肺動脈性肺高血圧症診療ガイドライン(2019年)」によると、その頻度はMCTD で7 %,SSc で5 %,SLE で1-7 %であり,多発性筋炎(PM)/皮膚筋炎(DM)にはみられなかったとのことです。

 膠原病の肺高血圧はニース分類では,第一群 肺動脈性肺高血圧の1.4.1に分類されています. つまり肺動脈性です。本例は高心拍出状態のため,肺血管抵抗が上昇していないにもかかわらず,肺高血圧になっていた症例です。

もちろん、肺血管抵抗が高くないので肺血管拡張薬の適応ではなさそうです. 肺動脈楔入圧も高くないので利尿薬の適応でもなさそう,ということで、高心拍出状態の原因を治療するのが理にかなっています。

 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)にも,肺高血圧の原因としての高心拍出状態についてはあまり記載がありませんが、「門脈圧亢進症に伴う肺動脈性肺高血圧症(PoPH)」について以下の記載があります.

「PoPH の成因として,まずシャントの出現や全身血管の拡張により高心拍出状態となるため,最初は PVR が正常である.その後,肺血管へのずり応力(shear stress)が増加して,肺動脈内膜肥厚や肺動脈のリモデリングが生じ,肺動脈の閉塞・狭窄を経て,PVR が増加すると考えられている。」(ニース分類の「1.4.3門脈圧亢進症」に該当。)

本例のような症例をみたら,古典的な高心拍出状態(脚気甲状腺機能亢進症・貧血など)の精査に加えて,門脈圧亢進症の有無を調べる必要がありそうです。