What's up? Cardiology

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし

血管炎の変遷:ANCA関連血管炎を中心に

 

 

私たちの教室では、循環器内科のみならず、呼吸器内科腎臓内科の診療をしています。そこで、時ANCA関連血管炎の患者さんと遭遇します。

循環器内科だけを診療していたころには、血管炎の分類や病名の変遷について全く知りませんでしたが、前任地で腎臓内科のS先生に、2012年に分類や病名が大幅に変わったことを教えてもらいました。

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それが、2012年のChapel Hill Consensus Conferenceです。

血管炎をそのサイズによりLarge vessel vasculitis, Medium Vessel Vasculitis, Immune Complex Small Vessel Vasculitis(小型血管炎)と分類し、小型血管炎はさらに免疫複合体性小型血管炎ANCA関連小型血管炎(ANCA-Associated Small Vessel Vasculitis)とに分類します。(以前は中小血管まとめて,結節性多発動脈炎(periarteritis nodosa:PAN)と診断されていました。)

私たちがChurg-Strauss症候群と覚えた疾患は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)に、Wegener肉芽腫症と覚えた疾患は、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)に、Henoch-Schönlein紫斑病と覚えた疾患は、IgA血管炎に、そして、Goodpasture症候群と覚えた疾患は、抗糸球体基底膜抗体病(抗GBM病)へとそれぞれ名称が変わりました。発見者の名前よりも病態を反映した名称に変更されたのだそうです。しかし、川崎病高安病の名前は消えることはありませんでした。本論文に日本人として唯一共同執筆者として参加しておられた、高橋啓先生のこちらの総説にそのあたりの事情が詳しく書いてあります。

ANCA(アンカ)抗好中球細胞質抗体(Anti-Neutrophil Cytoplasmic Antibody)の略で,PR3-ANCA (プロテネース3抗好中球細胞質抗体)MPO-ANCA(ミエロペルオキシダーゼ抗好中球細胞質抗体)があります。上記のGPAEGPAに加えて,顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA)がANCA関連血管炎に分類されます。

ANCA, PAN, EGPA, GPA, GBM, MPO, PR3, MPAと略語だらけで混乱してきたのでこの辺でやめておきましょう。

詳細は「ANCA関連血管炎ガイドライン2017」や、「血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)」をご覧ください。

 

「循環器内科医の知らない世界」でした。